授賞式写真

第30回 高松宮殿下記念世界文化賞 受賞者 発表 / 第22回若手芸術家奨励制度 発表

2018年 7月 11日

世界の優れた芸術家に贈られる高松宮殿下記念世界文化賞(公益財団法人 日本美術協会主催)の第30回受賞者が、7月11日(日本時間11日18時報道解禁)、ロンドン、ニューヨーク、パリ、ローマ、ベルリン、そして東京の各都市で発表されました。

今年の受賞者には、20代で日本の書道の筆遣いなどに影響を受け、独自の画風でベルギー現代美術を代表する90歳の現役作家、ピエール・アレシンスキー、「雪の科学者」の父・中谷宇吉郎博士の自然に対する思想を受け継ぎ、水を用いた人工霧による「霧の彫刻」を世界各地で制作している中谷芙二子、大胆なデザインと芸術的アプローチ、特に音楽施設の設計や、都市空間と人間との関係を重視する建築で高い評価を得ているフランスの建築家・都市計画家、クリスチャン・ド・ポルザンパルク、オペラを含む伝統的なクラシックから現代音楽まで幅広いレコーディングを誇り、巨匠中の巨匠といわれるイタリアの指揮者、リッカルド・ムーティ、常に癖のある役柄に挑戦して成功を収め、微妙な感情表現に才能を発揮して、今も第一線で活躍を続けるフランスの女優、カトリーヌ・ドヌーヴの各氏が選ばれました。

また、同時に発表される第22回若手芸術家奨励制度の対象団体には、7–18歳の子供たちがシェイクスピア劇を上演する世界最大の若手演劇祭「シェイクスピア・スクールズ・フェスティヴァル」を主催するイギリスの文化教育団体「シェイクスピア・スクールズ財団」が選ばれました。

 

各部門受賞者は、下記の通りです。

 

第30回 高松宮殿下記念世界文化賞 受賞者

■ 絵画部門    ピエール・アレシンスキー (ベルギー/フランス)

■ 彫刻部門    中谷芙二子 (日本)

■ 建築部門    クリスチャン・ド・ポルザンパルク (フランス)

■ 音楽部門    リッカルド・ムーティ (イタリア)

■ 演劇・映像部門 カトリーヌ・ドヌーヴ (フランス)

 

第22回 若手芸術家奨励制度 対象団体

シェイクスピア・スクールズ財団 (イギリス)

 

授賞式典は、日本美術協会総裁の常陸宮殿下、同妃殿下ご臨席のもと、10月23日(火)に東京・元赤坂の明治記念館で行われ、5部門の受賞者には、それぞれ顕彰メダルと感謝状、賞金1500万円が贈られます。若手芸術家奨励制度の対象団体には、7月11日(水)、ロンドンでの発表記者会見の席上、奨励金500万円が贈られました。

 

絵画部門 Painting

ピエール・アレシンスキー ベルギー/フランス Pierre Alechinsky

1927年10月19日、ベルギー・ブリュッセル生まれ

ベルギーを代表する90歳の現代美術家。1944年から4年間、ラ・カンブル国立美術学校で学び、1948年結成の国際的な前衛美術集団「コブラ(CoBrA)」(1951年解散)で活躍。その後、パリに移住。前衛書道家の森田子龍と交流を深め、1955年に初来日。『日本の書』という短編映画を製作した。書道の影響を受けた自由な筆さばきと、乾きやすいというアクリル絵具の特性を活かし、自身の内面を大胆に表現する。鮮やかな色彩と、複雑かつ有機的、躍動感と生命感にあふれた線描で、独自のスタイルを確立。1960年と1972年にはベルギー代表としてヴェネツィア・ビエンナーレに出品。2016-17年には日本初の大規模回顧展が日本・ベルギー国交関係樹立150年を記念して東京と大阪で開かれた。最近、フランス国籍を取得し、ベルギーからは初の世界文化賞受賞。

 

彫刻部門 Sculpture

中谷 芙二子 日本 Fujiko Nakaya

1933年5月15日、北海道札幌市生まれ

“霧のアーティスト”として世界的に知られる。人工雪の結晶を世界で初めて作った実験物理学者、中谷宇吉郎(1900-1962)の次女。米ノースウェスタン大学美術科を卒業後、初期の絵画制作を経て、芸術と科学技術の協働による実験グループ「E. A. T.」に参加。1970年の大阪万博ペプシ館で、水を用いた人工霧による「霧の彫刻」を初めて発表して以来、世界各地で霧を使ったインスタレーションやパフォーマンス、環境彫刻を80作品以上手掛けてきた。また、1970年代からビデオ・アート作品の制作や、海外注目作家の日本への紹介、若手育成にも尽力した。昨年は英国テート・モダン新館で霧の新作を発表し話題に。来年も日本、アメリカ、オランダなどで新しいプロジェクトが待つ。今年10月から来年1月まで水戸芸術館で初めての大規模な個展が開かれる。

 

建築部門 Architecture

クリスチャン・ド・ポルザンパルク フランス Christian de Portzamparc

1944年5月9日、モロッコ・カサブランカ生まれ

50歳の若さで、フランス人として初めて「建築のノーベル賞」と呼ばれるプリツカー賞を受賞するなど、フランスを代表する建築家・都市計画家。大胆なデザインと芸術的アプローチ、水彩画の画家としての側面を活かした想像力豊かな作風が特徴。パリやニューヨークで建築を学び、ミッテラン大統領(当時)のプロジェクトで、複数のコンサートホールや音楽博物館、居住区などを備えた『音楽都市』( 1995)で一躍有名に。代表作に福岡市の『ネクサス集合住宅』(1991)、ニューヨークの超高層ビル『LVMHタワー』(1999)、コンサートホール『フィルハーモニー・ルクセンブルク』(2005)、リオデジャネイロの複合文化施設『芸術都市』(2013)、パリ郊外の屋内スタジアム『パリ・ラ・デファンス・アリーナ』(2017)など。現在、中国の『蘇州文化センター』(2019完成予定)に力を入れている。

 

音楽部門 Music

リッカルド・ムーティ イタリア Riccardo Muti

1941年7月28日、イタリア・ナポリ生まれ

世界の音楽界をリードする指揮者。1967年の「グィード・カンテッリ国際指揮者コンクール」(ミラノ)での優勝で脚光を浴びた。ロンドンのフィルハーモニア管弦楽団の首席指揮者やフィラデルフィア管弦楽団の音楽監督を歴任。世界的な指揮者のアルトゥーロ・トスカニーニらが名演を繰り広げた歌劇場「ミラノ・スカラ座」でも1986年から2005年まで音楽監督を務めた。レパートリーは古典から現代音楽まで多岐に渡るが、中でもイタリアの歌劇王、ヴェルディの作品への理解力には定評がある。2010年からシカゴ交響楽団の音楽監督として活躍中。世界最高峰ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団による「ニューイヤーコンサート」には今年で5回目の登壇を果たした。来年春から日本で若い音楽家のための「イタリア・オペラ・アカデミー」も開催する。

 

演劇・映像部門 Theatre/Film

カトリーヌ・ドヌーヴ フランス Catherine Deneuve

1943年10月22日、フランス・パリ生まれ

フランスを代表する女優。両親とも俳優の芸能一家に生まれ、中学生の頃から映画に出演。ジャック・ドゥミ監督のミュージカル映画『シェルブールの雨傘』(1964)で可憐なヒロインを演じ、一躍世界的スターに。キャリアは半世紀を超え、出演作は100本以上。代表作は、ルイス・ブニュエル監督の『昼顔』( 1967)、フランソワ・オゾン監督の『8人の女たち』( 2002)など。ヌーヴェルヴァーグの旗手フランソワ・トリュフォー監督の『終電車』( 1980)、レジス・ヴァルニエ監督の『インドシナ』( 1992)の演技で、セザール賞主演女優賞を2度獲得。『ヴァンドーム広場』(1998)では、ヴェネツィア国際映画祭女優賞を受賞した。社会的発言も活発で、今年1月、セクハラ告発運動「#MeToo」を批判する女性文化人の寄稿に参加し、注目を集めた。

 

第22回 若手芸術家奨励制度

2018 GRANT FOR YOUNG ARTISTS

 

シェイクスピア・スクールズ財団(イギリス) Shakespeare Schools Foundation( U.K.)

世界最大の若手演劇祭「シェイクスピア・スクールズ・フェスティヴァル」を2000年から主催するイギリスの文化教育団体。時代を超えたシェイクスピアの言葉と物語によって、若者に自信を与え、成長を手助けする。毎年秋、少数民族の生徒や貧困地域を含む小学校、中学校、特殊学校など、イギリス全土の1000校から約3万人(累計で25万人)の若者(7-18歳)が参加。2カ月に渡り、130カ所以上の劇場の舞台で『マクベス』、『ロミオとジュリエット』、『テンペスト』など簡易版のシェイクスピア劇を上演する。2016年には、シェイクスピア没後400年記念としてウェストミンスター寺院などでも上演した。演劇界からトム・ストッパードジュディ・デンチも支援している。2016年から財団組織。